腹腔鏡下ヘルニア修復術
腹腔鏡下ヘルニア修復術は、腹腔内到達法TAPP法、腹膜外到達法TEP法の2通りの方法があります。
TAPP法 | お腹の中に二酸化炭素のガスを入れて、カメラを挿入してお腹の映像をテレビモニターで見ながら、ほかに2か所の創(キズ)をつけて、器械(鉗子)をお腹に差し込み手術する方法 手術終了時に、はがした腹膜を寄せ合わせます。補強材がお腹の内側に露出すると、そこに小腸や大腸が癒着して、術後の腸閉塞の原因になることがあります。腹膜が寄らないときには、片面に癒着を起こしにくい素材を貼り付けた特殊な補強材を用いることがあります。 |
TEP法 | 腹膜と腹壁の間に隙間をつくり二酸化炭素のガスを入れ空間を作り、この空いた空間に器械(鉗子)を差し込み手術する方法 手術創がある方、ヘルニアが再発した方は、癒着があるため腹膜と筋肉の間に隙間が作れないのでTEP法には適さない 腹膜を腹壁から広くはがして行う手術ですが、腹膜が裂けてしまうようなことが起こらなければ、腹腔内に影響が及ぶことはありません。 |
腹腔鏡下手術を希望される方は、手術をしても問題がないかなどを担当医に相談しましょう。
従腹腔鏡下手術のメリット・デメリット
メリット
- ヘルニア発生部位が左右の2ケ所にあっても同時に手術が可能
デメリット
8点のデメリットがあります。
- 費用が切開手術と比較すると高い(切開法の約2倍の費用)
- お腹の中の血管を傷つけ大出血をおこす可能性がある
- 再発率は5%程度で、切開法に比べ再発率が高い
- 全身麻酔でなければ手術が行えない
- 硬膜外麻酔が可能な方のみ
- 切開手術と比較すると手術時間が長い
- 切開手術と比較した場合、重篤な合併症を生じる可能性がある
- 術後、腸閉塞をおこす可能性がある
腹腔鏡下で行うへルニア手術の合併症
- 腸管、膀胱(ぼうこう)、輸精管(精子の通る管のこと)の損傷など
(ヘルニアの中に大腸や小腸が入り込んでいると、ヘルニア嚢を処理する際にそれらの臓器を傷つけてしまうことがあります。) - 大腿皮神経が損傷(術後に太ももの内側にピリピリする感じが生じる)
- そけい部に組織液、血液がたまる場合がある
- 創からの感染
上記の他にも、手術後に激しい痛みがある場合は、医師に相談しましょう。
入院期間
日帰り手術を行っている医療機関もありますが、多くは、様子観察のため1泊~数日入院されることを推奨します。手術当日に帰宅する場合は「本人以外が運転する車で帰宅すること」「体調が悪いと感じたら病院に連絡する状況である」など、周囲の環境が整っている必要です。
仕事の復帰時期と再発について
仕事の復帰については、痛みが軽くなってから推奨しています。特に、仕事の制限はありませんが、特に、重いものを持ち上げるような仕事の方は、担当医に相談しましょう。 また、深くかがみこむような下腹部に力を入れる体勢(和式トイレなどの時の姿勢)をするのは、術後1ヶ月程度は避けましょう。人工補強材のメッシュがずれてしまい、再発する可能性があります。
保険の適用について
腹腔鏡下ヘルニア修復術(両側)は健康保険が適用されます。
但し、切開法に比べ手術費用は、約2倍となります。
切開手術(ポリソフト法)と同様の点
- 入院期間が短い。(1日から3日程度)
- 痛みが少ない
- 傷あとが小さい(腹腔鏡下:3~5㎜×3箇所程度の穴/切開手術:3~6cm程度)
- 日常生活に早く戻れる
鼠径ヘルニアの手術法の一つに、腹腔鏡(細い管の先端にカメラが付いた手術器具)を使用しモニターを閲覧しながら行う腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術があります。
腹腔鏡下手術では、従来から行われているお腹を切開する切開手術(オープン法)と異なり、まずお腹に3mmから5mmの小さな穴を3ヵ所程度あけます。そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れてお腹の中を映します。その像をモニターで観察してヘルニアの場所を見つけ、別の穴から入れた手術器具を外科医が操作して患部の治療をします。
人工補強材を体内に挿入する際も、モニターで確認しながら操作します。
腹腔鏡下手術は、視野が限られたモニターを見ながら行われるため血管や神経などを傷つけてしまう場合があります。医療機関では、手術される方の希望や身体の状態などから、最も適切な手術法を選択します。