鼠径ヘルニアの手術治療|DK(ダイレクトクーゲル法)
ソケイヘルニアの治療について

DK
(ダイレクトクーゲル法)

ダイレクトクーゲル法は、ポリプロピレン製のメッシュで、弱った部分を補強し、腸などが出てくるのを防ぐ手術法です。

米国のDAVOL社とDr .Kugel らによって考案された手術方法で、形状記憶リングに縁取られ、中央にストラップの付いた楕円形の人工補強材(ポリプロピレン製メッシュ)で腹膜のすぐ外側を広く覆い、鼠径部の弱い部分の全体を一度に補強し、腹圧に対する耐久性に優れています。形状記憶リングによりパッチは広く腹膜前腔で展開されることで、ヘルニアの起こりうる部位(Hesselbach 三角、内鼠径輪、大腿輪、閉鎖孔、外側三角)を一度にカバーすることができ、外ソケイヘルニア、内ソケイヘルニア、大腿ヘルニア等、いろいろなタイプの同部のソケイヘルニア再発や予防もできます。

ダイレクトクーゲル法のメリットとデメリット

メリット

  • 腹膜前腔でパッチを伸展することが可能
  • 腹圧に対する耐久性に優れている。
  • ヘルニアの起こりうる部位(Hesselbach 三角、内鼠径輪、大腿輪、外側三角、閉鎖孔)を同時にカバーと補強ができる
  • いろいろなタイプの鼠径ヘルニアの再発を予防が可能

ダイレクト・クーゲル法が困難な症例

  • 前立腺癌手術で、下腹部を開腹している場合の適応不可
  • 再発ソケイヘルニア前術式で、一度、腹膜前腔を剥離しており再手術をすることが困難な場合
ダイレクト・クーゲル法に用いられる医療機器ダイレクト・クーゲル法に用いられる医療機器

形状記憶メッシュとストラップ

形状記憶リングにより折り曲げて挿入しても瞬時に広がり、従来使用されていたメッシュの欠点である縮みが少なく腹膜前腔でパッチが伸張し、ズレが生じることがありません。

固定にストラップを使用できるためメッシュがズレにくくなっています。また固定数が最小限で済み術後の疼痛予防にもなります。

おなかの中に人工物を入れて中から覆う方法

筋肉の穴だけでなく、腹膜の裏側からヘルニアの出るところをふさいでしまう方法です。

通常のメッシュはおなかの中に入れると腸などの内臓と癒着(メッシュと腸内の臓器や血管がくっついてしまうこと)し、腸閉塞の原因となるおそれがあります。最悪の場合、腸の壁に穴を開けてしまうこともあります。

子の手術が可能となったのは、お腹に入れても安全な特殊なメッシュ(人工物)ができたからです。内臓と癒着しない特殊な人工物を入れるので筋肉の周りや皮下(皮膚と筋肉の間)を剥離し、空間を作る必要がなく、手術そのものが体に与える影響が少ないといえます。また、腹腔鏡下の手術でこの方法を行う場合もあります。

形状記憶メッシュとストラップ